2024 - 商業・公共施設

所在地
米沢市
種類
キャンプ場
竣工日
2024年
間取り
温泉棟+管理棟
建物面積
-
土地面積
2,926坪(9,666㎡)

クライアントは「人と自然をつなぎ、共生し、循環する」ことを理念に、本事業を計画した。そのため、この施設全体を “人と自然をつなぐ舞台” とすることを目指した。
場所の魅力は、何と言っても 遠くの山々を見渡せる開けた景色 と、 温度調整や加水による泉質の変化がない天然温泉 の二つ。この二つの魅力を同時に体験できる秘湯は米沢でも珍しく、その魅力を最大限に引き出す工夫を施した。

《設計施工》
設計:
全体構想_株式会社網代建設一級建築士事務所/設計者:網代修
温泉棟_株式会社網代建設一級建築士事務所/設計者:網代修
管理棟・トイレ棟_黒澤建築設計事務所/設計者:黒澤祐介 
施工:株式会社網代建設/現場管理者:須貝一典

建築の特徴

▼温泉棟について
コンセプトは「ふゆやまの舞台」。2,000坪を超える広大な敷地内で、このプロジェクトの中心となる温泉棟の立地選定に最も苦労した。最終的に、人や建物、電柱などの人工物が視界に入らないよう配慮し、景色を一望できる土地の象徴的な場所を選んだ。

標高約800mに位置するこの地は、冬季には3mを超える積雪に覆われる。美しい銀世界が広がる一方、建物を守る対策が不可欠だ。通常の床高(GL+600mm)では雪に埋もれてしまうため、“3mの積雪対策” が最重要課題だった。

そこで、現代の建築では珍しい 高床式の木基礎 を採用。積雪時には基礎が雪に埋まり、上部だけが雪の上に浮かぶような景観となる。この姿は、3mの積雪と建物が融合した “ふゆやまの舞台” の象徴となる。

木基礎を選んだ理由は、雪が自然に流れ積もる環境をつくるため。また、建物全体に地元の木材を使用し、敷地との一体感を高めた。さらに、水脈への影響を抑えるため、建物は流れに対して ハの字型 に配置している。

浴室の窓からは、栗子山系や飯豊山系の山々を望むことができる。この窓は、単に大きな開口部を設けるのではなく、風景を切り取るようなスクエア型にすることで、特定の山にスポットを当て、人々の意識を集中させる設計となっている。これにより、利用者が自然と一体になる感覚を得られる工夫をしている。

また、浴槽には自然石を使用し、泉質の変化を最小限に抑えることで、天然温泉本来の効能を実感できるよう配慮した。

▼管理棟について
この建物は、もともとあったレンガ倉庫をリノベーションしたもの。長い年月を経たレンガ、むき出しの骨組み、鉄扉や格子窓など、新築では生み出せない味わいがあった。その魅力を最大限に活かすため、建物には極力手を加えず、家具や照明で空間を演出することにした。家具は合板でつくり、素朴な印象に。照明はレンガ倉庫の雰囲気に調和するよう、やわらかく温かみのある明かりを採用した。